映画「Mommy/マミー」監督・キャスト、あらすじ・感想 これが世界で注目を浴びるグザヴィエドラン…

映画に完璧も不完璧も無いけれど、こちらは極めて完成度の高い映画だと。
此れが、此れこそがグザヴィエドラン。
彼にとっての映画は、彼の心の闇も光もを写したものであり、社会への危惧を映しているのでしょう。
設定は架空のものですが、そのリアリティもクオリティも確かなものがあります。

作品情報

制作年 2014年

制作国 カナダ

上映時間 134分

ジャンル ドラマ

監督

グザヴィエ・ドラン

キャスト

アンヌ・ドルヴァル(ダイアン・デュプレ)

スザンヌ・クレマン(カイラ)

アントワン=オリビエ・ピロン(スティーブ・デュプレ)

あらすじ

架空のカナダでの物語。
連邦選挙で新政権が設立され医療政策改正を目的に、ある法案が採用された。
それは発達障害の子を持つ親が法的手続きを取らず、合法的に養育を放棄し子を施設に入院させることの出来る権利だった。
ADHDの息子スティーブに手を焼くシングルマザーのダイアンは息子への愛と疲弊を彷徨う中、2人の隣人で吃音に悩む元高校教諭カイラと2人は親しくなっていく。
交流を通して、其々悩みを抱えるもの同士の心に変化が現れる。

感想・考察

ジャケットの巧さ

圧倒的個人的見解だけれど、もうジャケットがイケ過ぎ。
何かを嘆きながらか淡い水色の空を見上げる少年。
「まだ僕は幼すぎて、ただ全てを欲しがっていた。」胸突き刺さる秀逸コピー。

役者の内面を映し出す、効果的なアスペクト比

シーンによって画面比率が1:1というのも面白い。
スクエアの画面に映し出された映像はキャラクターの内面に寄りたいがためらしく、その為この比率を使ったそう。
考える視点が斬新。
映画も画面も俯瞰して捉えてることで、この映画を通したメッセージ性を終始感じ、作り手のこだわりを感じる。
この比率の撮り方を初めて見他けれど、それによって確かに母親のシリアスな心境やスティーブの葛藤がより深刻さを増して感じることができる。
観る前というのは、一見何気ない様にも思えるのですが、意識して見ると凄い。
画面比率だけでこんなにも変化があるのものなのか。

飴と鞭の愛情

愛だけでは救えない。
というのも、飴と鞭ではありますが、それに正誤もありません。
そこに対するダイアンの葛藤というのも見もの。
登場人物のメインは3人だけれど、このキャスティングが見事にハマっている。
誰か1人が他の俳優になっても、この映画のメッセージは全く異なったものになった様にも。

ブラックジョークとのバランス

面白いと言っては良くないののかもしれませんが、散りばめられたブラックジョークは面白い。
そしてノスタルジックでアーティスティックな雰囲気を醸す演出も。
やはりアート作品をつなぎ合わせた様な映画で、素晴らしい。

「未来をわしづかめ、過去はクソだ」

学歴がなく仕事に就くことに大変な母を宥めるスティーブの姿が印象的。
ADHDであるスティーブを支えていたのは紛れもなくダイアンですが、そのダイアンもスティーブに支えられていたのも明白。
人の為に強くなれる優しくなれるというのもこういうことなのかな。
そしてカイラも例外ではなく、彼女が2人の間に入ったことで2人の関係が穏やかにも激しくも変化していく。
主演はスティーブとダイアンですが、カイラの役目というのは計り知れませんし、この物語は寧ろカイラのストーリーと言ってもいいのかもしれない。
スティーブ、ダイアン、カイラと3人が歌って踊るシーンは柵からもがき苦しむ葛藤が表面的でも、音楽によって解消されていく。
音楽の持つパワーをも感じる。

アスペクト比の変化

終盤でスクエアの画面から画面いっぱいに広がっていき。
3人の交流が心の豊かさを生み葛藤を昇華させていったのだろう。
しかし、それも束の間で、それは幻想だったのかも。
広がったにも関わらず、ぼやぼやの演出。これは3人の抱いている幻想の未来を写していたのかも知れない。
そしてまたスクエアの日常へと戻っていったので。
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