映画「ガタカ」監督・キャスト、あらすじ・感想 テクノロジー台頭の是非 リアリティのある近未来

テクノロジーの是非というのを示唆させてくれて、綺麗事過ぎず感情論でまとめ上げてくれるのもカタルシスを感じるので良かったです。
少し違和感を覚えるシーンもありましたが良い意味でリアルな近未来を感じ取れました。

作品情報

制作年 1997年

制作国 アメリカ

上映時間 106分

ジャンル SF、ドラマ

監督

アンドリュー・ニコル

キャスト

イーサン・ホーク(ヴィンセント)

ユマ・サーマン(アイリーン)

ジュード・ロウ(ジュローム)

ローレン・ディーン(ヘイウッド)

ゴア・ヴィダル(ジョセフ)

あらすじ

遺伝子操作によって管理された世界で生きる、劣性遺伝子によって生まれた宇宙飛行士を夢見る青年ヴィンセント。
彼は事故によって障害を負った優性遺伝子を持つジェロームと偽装契約を結ぶ。
そしてエリートになったビンセントは宇宙飛行施設「ガタカ」に入って行く。
しかし、彼は案の定疑いを持たれて…。

感想・考察

アンドリュー・ニコルの幅

今作のアンドリューニコル監督が脚本を担った作品は「トゥルーマンショー」「ロード・オブ・ウォー」は鑑賞済みです。
こちらも名作と言われるだけありテーマ設定や人物像の伝え方、カメラワーク、音楽素晴らしかったです。

冒頭のメッセージから感じるもの

行定監督の「GO」を見て感銘を受けたのですが、あのシェイクスピアの言葉を借りて物語の全体像を伝えてから始まる感じが好きなんですよね。
この作品では、ウィラードゲイリンさんの言葉を借りていましたが、良い意味で重くて考えさせられる言葉で冒頭の演出は非常に好きでした。
「自然は人間の挑戦を望んでいる」伝道の書の「神が曲げたものを誰が直しえようか」見終わってから改めて、この言葉を読み返すと物語が腑に落ちるというか。
前者は、自然は地球上の万物をも超越した対象であり揺るぎないものである。と読み取りました。
後者は、その超越的な自然は神のみぞ操れるものであって人間が関与していいものではない。と伝えてるのだと。

近未来的でありながら、もはや現代

今作はSFであり近未来という設定ですが、キーボードは寧ろ古さを感じます。
ファッションもダブルのスーツだったり所謂正装という感じなので寧ろ硬い印象です。
すると1997年の映画なので近未来というと2010年前後くらいの設定にも思えます。
また、尿検査なんかもプライバシーの保護がなくて近未来なのか?という印象。
ドローンや監視カメラを筆頭にプライバシー保護はこれからも加速すると思われるので、その点は違和感を覚えました。

愛の結晶としての妊娠 その本質とは

妊娠や子供というのは愛の象徴であり、今作では「愛の結晶」と表現されていますが、それは普遍的であり揺るぎないと思っていました。
そして、これからもそうであってほしいと願っています。
しかし今作ではそれは昔の話であって、近未来では操作された遺伝子なので違うと投げかけていました。
そんな世界にはなってほしくないと思いますが、生まれた瞬間に寿命や感染症なんかがわかる。わかってしまう。
ということの是非というのは端的には答えが出せないと思っています。
だから現代においてもテクノロジーの是非というのは議論されるのでしょう。
「知らない方が良いこともある」という諺も未来では、こういうことなのかも知れません。
それよって希望や夢がなくなってしまうのであれば儚く悲しいですから。

遺伝操作された弟との共存は可能なのか

ビンセントの弟は操作されて優性な遺伝子、そして人間へと成長していきます。
それが普通と言われることに対しても違和感を覚えます。
映画自体というよりはそういう社会に対して。
物事に対する暴力性や依存性をなくし、それらの有害要素を排除すれば傑作が生まれるというのも、命を物として表現しているのも悲しくもあり、創造物である以上はその表現があっているとも思いました。
しかし、優性な弟はに負けずに、どうにか希望や夢を持って努力するビンセントの姿というのは共感を促進するための存在だったのでしょう。

倫理の論理の狭間で

近年の映画はもとより本でもニュースでも人種差別やlgbtはよく取り上げられる印象ですが、今作では科学差別というワードが目新しくて新鮮でした。
やはりその対象がもはや科学的でそこには感情論よりも論理性が重視される不思議な世界です。

近年の情勢に垣間見れるSFのリアリティー

血液によるセキュリティチェックは仮想通貨のイベントに行った時に、似たものがあったので既視感がありました。
今作程スマートではないにしろ、やはり今作のサイエンスフィクションというのは既に現実にあり得る事ばかりで、フィクションでありながらフィクションでもないという印象で、そこが個人的には好きです。

嗜好品のみる 近未来の価値観

酒を酌み交わして話すビンセントとジェロームを写すシーンのタバコの煙とワイングラスの演出が滅茶滅茶格好良かったです。
クラシカルな音楽もまた。
テクノロジーや倫理観に訴えている映画でもありますが、音楽や煙草、酒といった嗜好品は近未来でも相変わらずです。
むしろ資本主義が終焉を迎え、お金の価値が下がれば嗜好品の重要性はさらに向上するのかもしれません。

人類発展のための遺伝操作の必然性

環境問題をどう対処するべきかということの1つとしている火星移住計画があるわけですが、既存の物事だけでは其処に向かうためには太刀打ち出来ないとすれば、このような遺伝操作は致し方無い事なのかもしれません。
近年は医療技術の発展に伴って人生100年時代といわれていているのですが、すると生きているうちにそのような移住という可能性も大なり小なりあるわけでまさに近未来的です。
そしてそうするならば遺伝操作は必然なのかもしれません。

感情論による訴求

しかしこの映画では、戻る事は考えずに、目の前のことに全力で。
体を借りて夢をもらった。というような教訓もありました。
ここからわかることというのはいくらテクノロジーが進歩しても科学では解決できない人の心の中にあるものこそが原動力であると伝えてくれているようで矛盾はしていますが、それで良かったとも思えました。
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