衝撃的なラストは”サスペンス”を強く感じさせる。
「七つの大罪」をテーマに怪奇な殺人鬼をシンクロさせるのだが、その陰湿な世界を優しく包むかのように演出する。
これがデビッド・フィンチャーワールド。
作品情報
作年 1996年
制作国 アメリカ
上映時間 126分
ジャンル サスペンス
監督
デビッド・フィンチャー
キャスト
ブラッド・ピット(デヴィッド・ミルズ刑事)
モーガン・フリーマン(ウィリアム・サマセット刑事)
グウィネス・パルトロー(トレイシー・ミルズ)
ケヴィン・スペイシー(ジョン・ドゥ)
あらすじ
退職を控えたベテラン刑事サマセットと若手刑事ミルズは猟奇連続殺人事件の捜査にあたる。
犯人はキリスト教における7つの大罪に基づいて殺人を繰り返していることが明らかに。
やがてサマセットとミルズは容疑者を割り出すが、その人物に逃げられ、さらにミルズの素性が知られていたことも発覚する。
そしてさらなる殺人事件が続いた後、驚愕の事態が…。
感想・考察
衝撃的なラストは”サスペンス”を強く感じさせる
サスペンスを直訳すると不安感や緊張感。それらを強く感じさせる映画といえば、スタンダードかもしれないけれど僕は今作と「ユージュアルサスペクツ」を挙げる。
今作は1996年の製作ということなので僕の生まれた年だが、その前衛的な映像は今見ても、何度見ても圧巻で引き込まれること違いない。それだけデビッド・フィンチャーの映画作りには強いエネルギーを感じる。現に僕が初めて今作を鑑賞した時には、そのサスペンスチックな作風に衝撃を受け、鑑賞後の余韻がしばらく続いていたことを今でも鮮明に覚えている。
「七つの大罪」をテーマに怪奇な殺人鬼をシンクロさせる
キリスト教カトリックによると、人間が犯す罪の根源を辿れば七つの要素が挙げられるという。それを概念的に称したのが「七つの大罪」。その7つの要素を追うように今作では怪奇な物語が展開される。
実際、七つの大罪について知見のある方であれば終盤にはおおよそクライマックスがわかってしまうかもしれない。しかし、それでも何度も見たくなるのが今作。7つの罪のピースが、物語の進行に合わせて1つずつはまっていく様子は、まさに目が離せない状態になる。
怪奇や殺人鬼といえば、それっぽくなる聞こえるかもしれないが、実際に怪奇はこういうことか、と今作を見れば思うようになるはず。自分を神格化というか高貴な存在であると思い込む犯人には怪奇という言葉がよく似合ってしまう。端的に犯行に及ぶ犯人ではなく、自分の信仰する事柄をひたすらに信じている姿が痛々しく遣る瀬無い。というのも、彼はあくまでもそれが善的な行いだと信じているから。
本来、道徳的には間違っている犯行の痛々しさをデビッド・フィンチャーの世界観が優しく包んでしまうのが不思議だったりもする。ジメジメと陰湿な演出がそうさせるのだけれど、「ドラゴンタトゥーの女」でも暗く陰湿な世界は似た演出を感じる。