アン・ハサウェイ演じるカウンセラーと生存者の緊迫感や不安感はカウンセリングの難しさを示唆させる。
ロドリゴ・ガルシア監督は、登場人物と観客を配慮した一貫性のある作りを魅せ、センシティブで抜かりない。
あらすじにある”驚愕”は正しい。
そもそも複線があるようでないのがそうさせる。
作品情報
制作年 2008年
制作国 アメリカ
上映時間 93分
ジャンル ミステリー、サスペンス
監督
ロドリゴ・ガルシア
キャスト
アン・ハサウェイ(クレア・サマーズ)
パトリック・ウィルソン(エリック・クラーク)
デビッド・モース(アーキン)
アンドレ・ブラウアー(ペリー)
クレア・デュバル(シャノン)
ダイアン・ウィースト(トニ)
あらすじ
飛行機事故で生き残った5人の乗客のカウンセリングを担当することになったセラピストのクレア。
しかし、5人の生存者がひとりまたひとりと姿を消していく。
不審に思ったクレアは事故の真相を探っていくが、そこには驚愕の事実が待ち受けていた…。
感想・考察
カウンセリングの難しさと監督のセンシティブ
今作はアンハサウェイ演じるクレアが、カウンセリングを必要とする生存者へのカウンセリングを行うことで物語を進め、そしてどんどん不可解な謎に接近していく。
カウンセリングを行う際に映される被害者の緊迫した表情や言動は、カウンセリングの難しさを示唆させるのだが、どこかリアリティがなかったりもするのが正直なところ。
しかし、それがミステリアスな雰囲気を倍増させたのは確かだった。
監督がこれを計算し尽くして、このような演出にしてるとすれば、非常に凝った構想であり、センシティブな監督なのだと感じさせる。
センシティブというのは、生存者の苛立ちや不安定な心理的描写はもちろん、映画を観ている僕までを想定し目配せし、その両方を損なわず効果的に表現しているから。
つまりは、登場人物への配慮から観客の配慮が一貫しており、そこに抜かりがないので、ミステリアスな雰囲気に余韻を残す結果となっている。
ロドリゴ・ガルシア監督というと、彼は「ゼロ・グラビティ」の脚本も担当しているようだけれど、彼の監督作品を他にも観てみたいと感じる良作であった。
ただ、ヘルメットを渡さずにバイクに乗り込むエリックは単に格好が悪い。
せめてもクレアにはヘルメットを被らせよう。
ミステリアスな作風はもう二度と見たくない映画、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を思わせた。
驚愕のラストは正しかった
あらすじを見たときに驚愕のラストというフレーズに少し引っかかってしまったのだけれど、確かに驚愕なラストであった。
ミステリーやサスペンス映画というと、伏線を散りばめておくのが通例であろう。
しかし、今作には回収する複線を僕は見つけることができなかった。
というより、なかった。
そのため”驚愕”に相応しいラストを飾っている。
そもそも複線がなくラストが何も予想ができなかったので、あるべくしてある驚愕だったのかもしれないけれど、それも含めて観客の逆を突くラストの作りは実物であった。
ただ、こういう作品を見ると驚愕がっただけに、飛行機に乗るのが億劫になったりもする。
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