ディズニーの名作を「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソン主演で実写映画化。
圧巻の映像美に魅了され、寓話的な強いメッセージも感じる作品。
ベラの聡明で優しい姿。演じるエマ・マトソンのフェミニストとしての活動が見事に嚙み合う。
作品情報
制作年 20017年
制作国 アメリカ
上映時間 130分
ジャンル ロマンス
監督
ビル・コンドン
キャスト
エマ・ワトソン(ベル)
ダン・スティーブンス(野獣)
ケビン・クライン(モーリス)
ルーク・エバンス(ガストン)
ジョシュ・ギャッド(ル・フウ)
あらすじ
魔女にかけられた呪いによって野獣の姿に変えられてしまった、とある王子。
魔女が残した一輪の薔薇が、人間へ戻れる時間のタイムリミット。
薔薇が全て散ってしまったら王子は永遠に野獣の姿。
希望を失っていた野獣の元へ、美しく聡明なベルが現れる。
彼女の純粋な優しさとは、反対に自信を持てない野獣だったが…。
感想・考察
聡明なエマ・ワトソンとフェミニズム
映画「ドリームガールズ」で有名なビル・コンドンが抜擢したのが、ベラを演じるエマ・ワトソン。
今作で野獣と並び、最も重要になるのがヒロイン、ベルを演じる彼女は、キャスティングの際に一番先に決定したキャストだという。
今作において聡明な女性ベル。リアルでも聡明なエマ・ワトソン。
劇中だけではなく、リアルでも”聡明な女性”という点が見事にマッチしたのだ。そしてそれが大きな意味合いを今作では持っている。
女優としての活動はもちろんだが、彼女はフェミニズム活動にも積極的で、女性のエンパワーメントや性差別について訴えている。
そんな彼女の女優以外の活動が監督の目にとまり抜擢となったのだろう。
小さなコミュニティで聡明で優しいということ
そもそも、今作におけるベラが”聡明”であるということは重要条件だ。それが全体を通して大きな意味を持つ。
ベラの住む小さな街で、聡明な彼女は「変わり者」であり「面白い(揶揄的な意)」存在なのだ。
これは映画の中に止まらずリアルの世界でも同じように揶揄される人々はたくさんいる。
現代がどれだけ「ダイバーシティが重要だ」「社会的マイノリティを活用しよう」と言ったところで、いわゆる普通と違う人=偏見の対象 という現象はリアルの世界でも間違いなく起きている。
綺麗事をいうつもりはなく、自分もそんな社会を構成している1人の人間であるからやるせないような気にもなる。
だから書くことで何かを伝えたいとも思うから書いている。
都心なら未だしも、地方のコミュニティに行けば、それは本当に顕著で肌で感じる。
話がスケールアップしすぎるが、「日本の経済が停滞している」「地方都市が衰退している」というのも根幹を辿れば、こういうことが関連していると確信している。
揶揄されても聡明で優しくいること
揶揄されても、ベラは優しさで包括し、野獣を元に戻すということで昇華している。
つまり、野獣の姿にさえ偏見の目を持たず、優しく関わることで、野獣を王子へ、寂れた城を活発に、ということに寄与している。
あくまでファンタジックで、劇的な変化なのでリアリティは確かにない。しかし、それがファンタジックな映画の見せてくれる素敵な一面でもあるのも確かだ。
このベラの姿勢には沢山のメッセージが詰まっていると思えるし、それが監督の伝えた方メッセージだろう。
すると、やはりエマ・ワトソンがフェミニズムについて語ること、ベラをエマ・ワトソンが演じたことは表裏一体であり、必然的にも思える。
さらに、今作は教訓的な内容を孕んだ寓話色が非常に強い映画にも見え、なおかつ腑に落ちる。
それを的確にマッチングさせ、キャスティングしたビル・コンドン監督もまた素晴らしい。
圧巻の映像美
これまで800本ほどは映画をみてきたわけですが、その中でも群を抜く圧巻の映像美。そしていうまでもなく特筆すべき点。
もちろん華やかという意味合いと、テクノロジー的な意味合いも含んでいて、歴史的建造物と最新鋭の技術、製作に込められた想いとの融合が素晴らしい。
モデルとなったお城は、フランスの「シャンボール城」とのこと。
現在世界遺産にも登録され、設計にレオナルド・ダヴィンチが関わったとしても知られており、まさにこのスペクタクルな大作を撮影するに相応しい場所として腑に落ちる。
そして、ベルの暮らす小さな村となったのが、フランスの「コンク村」で、数多くの名所が存在するフランスの中でも”フランスで最も美しい村”として認知されてる。
しかし、シーンの好きなさもあり、その美しさはあまり感じることができなかった…。
さらに、ベルと野獣にとってポイントとなる図書館のシーンが、ポルトガルの「ジョアニナ図書館」ということで25万冊を超える本が所蔵されているそうな。
圧巻の映像美はもちろん、そんな歴史的な側面からも楽しめるのが今作のまた1つの面白さです。
そして、これらのセットを動かすのになんと1000人のスタッフが関わっているそう。
さらにベラの着用するドレスはオスカー受賞者の衣裳デザイナー、ジャクリーヌ・デュランが手がけている。
ベラと野獣が踊るシーンには欠かせないこのドレスには2000個以上のスワロフスキー…。セットへのこだわりが垣間見れる。
そして何より、裕福でもなく小さな村で過ごしていたベラが、優しさを認められ日頃の鬱憤が女性にとって1つの憧れである美しいドレスという形で表現されているのが、鬱憤の昇華に大きく寄与してくれた。