映画「7月4日に生まれて」監督・キャスト、あらすじ・感想 戦争のもたらす群集心理や利己主義、虚構

7月4日で23歳になりました。
同日がアメリカの独立記念日です。
その背景なんかを明確に認知していないので、触りにと思い、ちょうど目に留まったので観賞です。
愛国心を元にベトナム戦争に参画した1人の青年の視点から、戦争のもたらす群衆心理や利己主義的言動がダイレクトに描かれていました。
さらに戦争による具現化された下半身不随。それにも増して大きな、心に負った傷。

作品情報

製作年 1989年

製作国 アメリカ

上映時間 145分

ジャンル ドラマ

監督

オリバー・ストーン

キャスト

トム・クルーズ(ロン)

ブライアン・ラーキン

ウィレム・デフォー

あらすじ

アメリカはベトナム戦争で建国以来初の敗戦を期する。
東南アジアの小国に敗戦したことで、ベトナムからの帰還兵は、戦争の罪悪感や就業難に苦しむ。
そんな歴史をアメリカの独立記念日7月4日に生まれたロン・コヴィックの自伝小説をもとに製作された作品。
彼は21歳の時に海兵隊としてベトナムに派遣されたが、負傷し下半身付随で帰国。
そんな、彼が負ったのは体の後遺症だけではなく、愛国心のもたらした心の傷だった。

感想・考察

愛国心がもたらした戦争

愛国心のもたらしたものは戦争であり、それによる挫折や消失感。愛国心のように、何かにすがる気持ちを否定する気はありません。
定義するのは困難な事柄ですが、国家や宗教の様に実体のない虚構にすがることは、果たして人を本質的に幸せにするのか否。
ベストセラー「サピエンス全史」はビジネスマンや本を読まれる方には記憶に新しい存在です。
そこで書かれている様に、人類の発展は虚構によるものであるとすれば、その有用性、合理性は非常に的確で腑に落ちるものです。

お金という虚構

資本主義や拝金主義的な経済に置き換えれば、お金の在り方というのも1つの虚構でしょう。
本来の共通認識でいえば、お金というのは紙切れです。
原価にすれば数円にも満たないかもしれません。
それをお金と認識し大衆が経済活動に役立てる、というよりすがる姿は、一見合理的ではありながら虚構を生きているとも言えるわけです。

虚構のもたらした戦争

つまり、愛国心という1つの信念も一種の虚構なのかもしれません。
そんな事を思わせてくれる映画です。
ただ、虚構についても否定的なわけではありません。
人は弱く何かにすがる事、信じる事で強く、優しくなれるものでもあると信じているからです。
それが虚構であろうと実体のある何かであろうと、結果論的には、それがエネルギーになるのであれば結果的に幸せと定義しても問題はないでしょう。
そこで問題になるのが、愛国心という事柄に漬け込み資本を肥やすために行う戦争の是非です。
人類が歩んできた歴史の中で切っても切れない事です。
それによって学びを得て、より良い経済、心を手に入れたことも間違いありません。

方法論として戦争の是非

方法論として戦争が適切か、という事があります。
確かに人の死が絡むのでスケール、インパクト共に絶大な効果が有りますが、もっと効果的な学び方、ツールが有れば良かったとも思うのです。
兵隊こそ至高の存在であり、それが愛国心を構築する要素で有れば、それはネガティブですが国民に対する洗脳行為です。

発音の意図することとは

アメリカ人が硫黄島はイオウジマ、パリスアイランドはパリスアイランド、朝鮮はコリアと表現することが不思議でした。
何処まで当時を忠実に再現しているかわかりませんので、真意はわかりませんが、この差は何によるものなのか。

虚構を創造するのがリーダーである

犠牲を払う心がなければ、この国は滅びるというケネディ大統領の言葉も納得はします。
リーダーというのは一見1つの虚構をそれとなく信じさせる力の持ち主でもあるのでしょう。
人々が働く企業に置き換えれば、社是や社風、理念、ビジョンなんかも1つの人を動かすための虚構です。
時にはポジティブな指針となりうるものの、時には自己破壊に繋がる言葉による洗脳であり抑圧でも有るのです。

美化されたものは本質的にクールではない

愛する家族や地元、想いを寄せる恋人から離れても国に尽くすことを美化するロンの姿はクールでありながら、全くクールではないのです。
ジレンマ的ですが、美化されているだけで本質的には現代において全く共感は仰ぎません。

Americanismな色彩

夕暮れの色味と飛行機のガジェット感のコントラストが最高に芸術的です。
当時のアメリカらしいノスタルジックな色彩にも注目です。

人種を問わず渇望する、人間らしさ

ベトナムはリッチな白人の戦争で有ると、揶揄するシーンがある印象的です。
黒人差別を止め、平等な権利を持つ事が訴えられていました。
あえて黒人のキャストを使ってのわかりやすい演出ではありますが、トムクルーズ演じる白人のロンも意図するところは同意です。
入院したロンの排泄物は後回し、騒げば騒ぐ薬を打って大人しくさせる。
ベトナム戦争の関係で予算が回らず、医師の数も足りず、適切な設備も使えないので当然ですが、せめて人間らしく。と願う元兵士の懇願は儚いです。
当時の価値観は変わらず英雄気取りでもあることの周りから見た遣る瀬無さも感じます。
しかし、それを作り上げたのは国家の虚構なのです。

戦争によって何を得たのか

みんなに帰宅を祝福されるロンですが、戦争の過酷さを知らないから祝福できるのかもしれません。
遠くで起きた戦争なんて気にかけていない、政府の口車に乗せられて始めた馬鹿な戦争と揶揄する人々からその非主観的な趣向が伺えます。
国のために戦って何を得たのか。弟の言葉が合理的すぎて突き刺さります。
失ったものばかりではないのか。
五体満足であることの幸せ、普通が一番でも二番でもありませんが、普遍的な事に幸せを感じることの大切さをも教えてくれます。

鬱憤、昇華、カタルシス。映画的合理性として

戦後も愛国心のあったロンですが、次第に反対派になり最終的に演説をする事になったのは心地よかったです。
当時のロンの言動に鬱憤が溜まりに溜まっていたのでこういう形で昇華しカタルシスを与えてくれるのは素晴らしい演出です。
母親の冒頭の演説の夢がこんな風につながるとは思いもよりませんでした。
そして黒人を始め人間らしさを唱えるロン。
想いを乗せて会場に入っていくロンは誇り高い青年を感じました。