映画「マイ・マザー」監督・キャスト、あらすじ・感想 愛情過多と思春期の葛藤。絵画のような演出に乗せて

映画「マイ・マザー」監督・キャスト、あらすじ・感想 愛情過多と思春期の葛藤。絵画のような演出に乗せて
其々のカットがアーティスティックで、絵画のようなアート作品を散りばめて繋げた芸術作品のような映画。
セクシャルマイノリティをこんなに芸術的に表現した作品は初めて。
しかし、良くも悪くも応えがなく作品によるメッセージが抽象的ではあったり。

作品情報

制作年 2009年

制作国 カナダ

上映時間 100分

ジャンル ドラマ

監督

グザヴィエ・ドラン

キャスト

グザヴィエ・ドラン(ユベール・ミネリ)

アンヌ・ドルバル(シャンタル・レミング)

スザンヌ・クレマン(ジェリー・クロウティエ)

フランソワ・アルノー(アントナン・ランボー)

あらすじ

思春期の主人公ユベールを監督グザヴィエドラン自ら。
顔を合わせれば口論になってしまう母親とユベールは2人暮らし。
そんな彼は母親には心を開かずにアートの世界や同性の恋人が心の拠り所。
そんな彼と母親の行き着く未来とは…。

感想・考察

愛情の過多と思春期の葛藤

親からの愛情過多による小言や心配というのはユベールに限らず多くの人が経験している事かと。
そこに対する大人でも子供でもいられない思春期の少年少女というのは葛藤と隣り合わせです。
そんな姿が巧く描かれている。
でも少し過剰にも見えたり。

冒頭の演出

こちらの作品ではモーパッサンの「母親への愛は無意識であり親離れの時 初めてその根の深さを知る」という言葉が冒頭に挿入されている。
この類の演出が好きということは前にも書いたんですが、そう思うと映画監督というのは文学的なこともよく知っていないとこういう演出は出来ないから、博学な方が多い印象を受ける。

グザヴィエドランの巧さ

冒頭の演出やカットの巧さは流石。
鬼才や天才、カリスマなどなど色々なポジティブな表現で認知されているというのが伝わる。
その意味が腑に落ちた作品。

年齢が為すもの

18になったら〜20になったら〜という年齢で区切る教育方針が個人的には苦手。
年齢がそうさせてくれるものなんて大衆的な免許や飲酒、喫煙そのくらいで十分。
他は個人のスピード感によりけり。

予算とカメラワーク

思ったより低予算で製作されていたのでしょうか。
カメラワークなんかは良く言えば効果的で、悪く言えば端的にも。

役者としてのグザヴィエドラン

アートを志す人々の言葉は良い。
学生と言えど哲学的で表現が豊かで格好良い。
音楽は美しい。
スローモーションと白熱した口論のスピード感が対比して演出されているのも面白い。
手を取り合ったりハグしたり愛してるといったり、ユベール自身の愛情的表現が一方的かつ気紛れで、思春期を良い意味で過剰な演出で伝えてくれる。
若い監督ということは理解してましたが、主演だし17歳という設定だと、そこにシナジーが生まれる。
設定上でもすがら17歳で監督となるから凄い。
彼のビジュアルも17歳と言われればそう見えるのでリアリティというか等身大の感じもあり違和感もなかった。

感情と有形物の対比

感情という人の心の中のものを、敢えて全く違うもので比喩するのも印象的。
感情の高まりや怒りをガラスの破壊で表現するなんて凄い。
シーンが切り替わっていないのにも、効果音だけ先に挿入しておくのも珍しいく巧いなと。
セクシャルマイノリティの不倫を初めて見ましたが、なんだか一般的な不倫よりも重くて背徳感を感じるような。

抽象的な締まり

ラストでは明確な答えを出さない、出せない。

というのもこの作品の良さなのかもしれない。

そしてそれは其々が考えて、という社会性に富んだメッセージを投げ掛けているのだろうと、感じる。

自分は両親からの小言や愛情というと良いのか悪いのか両親からは勉強しろ、などと小言を言われること全くありませんでしたし、意味不明な感情論に流されて両親に暴言を吐いたり暴力的になる事は有りませんでした。周りのみんなは勉強勉強、と言われていてうちの親は何も言わないけどウチは大丈夫なのか?などと思っていました。当時はそんな風に心配になったりもしたのですが、今では両親の意図が本当によく分かります。矯正させる勉強など大した意味は成さないという趣旨だったのでしょう。中学3年生の時は矯正させられない分、行きたいと思う高校へ行くためには勝手に自分で勉強していました。両親が望んだのは、そういう事だったのでしょう。今思えば良くも悪くも上手く乗せられていたのだと思いますが、信頼してくれていたから何も言わないという判断が出来なのでしょう。そう思うと嬉しく思います。
言うことよりも言わないことというのは難しいことだと思うので。前にも書きましたが「愛とは許す事」と教えてくれた先生が居ました。まさにそういう事なんだろうなと。自分が暴言や暴力に頼らず自分の気持ちを伝える事が出来たのも両親がそういう育てた方をしてくれたからだろうなと思っています。もちろんどの育て方が正しいとか間違ってるとか良いとか悪いとか。そんな事を思っているわけではありません。ただ自分はそう育ててもらって良かったなとは思っています。

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