窪塚洋介ではない窪塚洋介、されど窪塚洋介。
脳に障害を抱える青年の純粋無垢で愛らしい言動を的確に表現している。
そして、彼にも増して内藤剛志のコミカルな演技がシリアスな物語のアクセントに。
作品情報
製作年 2001年
製作国 日本
上映時間 126分
ジャンル ドラマ
監督
森淳一
キャスト
窪塚洋介(テル)
小雪(水絵)
内藤剛志(サリー)
あらすじ
脳に障害を抱える青年テルは、祖母が営むコインランドリーで洗濯物を盗まれないように見張り続けている。
ある日、水絵という女性に出会ったテルは、ランドリーにワンピースを残したまま故郷へ帰ってしまった水絵を追って外の世界へと足を踏み出すが…。
感想・考察
窪塚洋介ではない窪塚洋介、されど窪塚洋介
僕はもちろん、多くの方の認知する窪塚洋介といえば、ファッションアイコンであり卍ラインであり格好いい俳優なんだと思う。けれど、この映画における彼は障害を抱える青年の役だ。すると、一般的に広く認知されている彼とは反する人物として描かれている。だから、設定という表面的には彼らしくなかったりもする、だけれども、よくよく見てみるとやはり主人公テルは窪塚洋介、そのものだった。
というのも、深く被ったニット帽にルーズな服装でも彼はキマッているし、それがファッションアイコンとして彼を確立させる所以でもあるのだろうと思うから。そして、脳に障害を抱えながらも・抱えていることが災してとでもいうべきかもしれないけれど。純粋無垢で心優しいテルの姿は、現代の窪塚洋介とリンクするところがあった。それは、現在彼から社会派の発言が目立つように、鋭い眼差しで社会を見つめる彼の姿、彼の優しさ、そのものだと感じたから。
「飴と鞭」やら「厳しさの中に優しさがある」という言葉があるように、多少きつい言葉を放つ彼の根幹には優しさがあるのだと僕は思っている。実際、きつい言葉をかけるのは優しくなきゃできないことで、表面的な優しさなら人にきつい言葉はかけない。そう思えば社会に厳しいメッセージを問いかける彼は優しい。
他にも彼について再確認したことがあった。カメレオン俳優の異名を持つ俳優はたくさんいるけれど、中でも彼はカメレオンらしい俳優。脳に障害を抱える青年の子供染みた言動は圧巻で、演じているというよりは、そのものだった。もちろん演じているのだけれど、そう思わせないところが、彼の凄さだろう。
内藤剛志演じるサリーの存在感・アクセント
窪塚洋介演じるテルもさることながら、内藤剛志演じるサリーの存在感は異様だった。ストーリー的にも重要になる位置付けではあるのだけれど、それを無視してもコミカルに描かれる彼の姿は、今作に程よいアクセントをくれる。
彼が昔交際していた女性との写真を台無しにされれば、狂気染みた言動へ。自宅と車と鳩をテルが気に入ったという理由だけで、譲渡する。”パツキンのデカパイ”と結婚するという名目で海外にとんでさえゆく。そして、走行中の車を手で止めたり。と。
今作において、窪塚洋介や小雪よりも物語にアクセントを加えたのは内藤剛志演じるサリーに違いない。