何が正誤、善悪なのわからなくなります。
ただ虐待を行った看守は悪で、虐待を受けた囚人は善という端的な構図では図れないと思います。
むしろ、囚人を悲劇のヒロイン的な善だと露出するメディアこそ悪ではないかとさえ思います。
作品情報
制作年 1994年
制作国 アメリカ
上映時間 124分
ジャンル ドラマ、クライム
監督
マーク・ロッコ
キャスト
ケビン・ベーコン(ヘンリー)
クリスチャン・スレイター(ジェームス)
ゲイリー・オールドマン(ミルトン・グレン)
あらすじ
貧しさから窃盗を働いてしまったヘンリーが投獄されたのは有名なアルカトラズ刑務所。
看守の異常な虐待を受けたヘンリーは新米弁護士のジェームズと法的に戦うことを決める。
しかし、ヘンリーは…。
感想・考察
サイコパスな演技について
ケヴィンベーコン演じるヘンリーの演技は見事でした。
自失状態による不信感なんかが素晴らしい。
マークロッコ監督ということですが初耳の監督さんでこの映画はかなり評価され他の、、という感じなので他も見てみたかった。
実話がベースの虚構?
しかし、この映画は一説によると実話とはかけ離れているとも言われているようです。
鑑賞中はのめり込んで見ていましたし、素晴らしい映画だけに少し残念でもあります。
実話をベースにという類の映画は特に感情移入効果が高まる傾向があるので一種のマーケティングなんですかね。
ビジネス的側面があるのは承知なので仕方がないですね。
他の囚人ものとの比較
リアルを知らない自分がリアルを語るのも失礼ですが、囚人モノの映画で1番リアルを感じました。
漫画ではrainbowが最もリアリティを感じましたが看守の過剰な虐待は似たものを感じます。
囚人と看守の対比 そこに生まれるシナジー
囚人は光も殆ど入らない独房に閉じ込められ外部との関わりもなし。
食事は最低限。最低限といってもそれは憲法にあるような文化的な食事とは程遠く、食べることの出来る。という意の最低限。
それとは対照的に看守は光の下を自由に歩き家族との時間を過ごす。食事はハンバーガー。
囚人のネガテイブなイメージ、看守のポジティブなイメージがそれぞれシナジー的な表現されています。
どこまでが悪なのか。裁きを受けたら善か。
一見、囚人は法的に裁きを受けてたのでればその後は善であって、継続的に裁きを行う看守は悪となる場合が多いと思っています。
さらにそれが過度に演出されメディアで、今度は看守が悪人になり囚人は正に悲劇のヒロイン的な扱い。
これもこれで看守にとっては不条理だと思うんです。
看守は自分の信じた法や家族を守る為に肉体的精神的に囚人を追い込むことでそれらを守ろうとしているのであれば。看守グレンもその1人。
自分は映画に限らず、この手の囚人モノのを見る際に留意してることがありまして、勿論、不条理や過剰な虐待というのはあるのも事実のようですが、看守=悪。囚人=善的な趣向や構図では端的過ぎないかと。
どのような道具で罰を与えるのかというのは定まってるかもしれませんが、その威力や当人が感じる肉体的、精神的苦痛は当たり前ですが異なります。
なので、そこには感情論が必ずついて回ります。
するとそれを与える看守も受ける囚人も法的な根拠のみでは図らないものがあるのではないのかと。
うまく伝えられませんが、虐待した看守=悪、虐待を受ける囚人=善、悲劇のヒロインという構図だけでは、この手のものは理解出来ないと思うのです。
例外もありますが、そもそも囚人は基本的に法を犯したから投獄されるわけであって、看守は基本的に法を守るのですから。
家族やお金を守る為に囚人を痛ぶり肉体的にも精神的にも苦痛を与え脱獄を企てないようにする。
それが看守の信じる善なのですから。そして囚人が一度法を犯し人々に与えた恐怖心や信用性はそれだけ大きいということも示唆しています。
というのもヘンリーは法的に守られたから投獄されたとも言えるからです。
法的な裁きを受けずに窃盗後も野放しであれば彼自身もっと辛い思いをしたかもしれませんし、法を犯したかもしれません。
貨幣経済のうちは犯罪はなくならない?
抽象的ですが平和にならばいいとは思います。
お金が存在し貨幣で経済が周る資本主義的趣向が一掃されない限り、幻想とは思っていますが。
さらに資本による優劣がなくなれば成長もしないという論には納得なのでとりあえずこのままの貨幣経済、資本主義で行くしかないとは思っています。
信用経済なども言われていますが、それだけで実用化される事はないでしょう。
すると、やはり資本主義的な側面は永続的なのかもしれません。
それだけよくできた仕組みだとも思います。
AIが裁判を実施。感情論で語れるのか。
AIが裁判官を行うという記事なんかも出ておりますが、人の感情論をどれだけ論理的に述べたところで完璧はなくて、現在のアルゴリズムでは本質は得られないのでしょう。
クライマックスのカタルシス。鬱憤の昇華
ラストの、そして私は野球ファンになった。
なんだかその言葉で報われた気がしました。
無駄なところは1つもなかったと思います、しかし長くも感じてしまいました。色彩やカメラワークが少し単調なのかもしれません。
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