「シング・ストリート」ジョン・カーニー監督作品。
音楽で繋がった男女の人間模様を映し出す。
陰湿なダブリンの街と冷淡にも聞こえる音楽の奏でる意味合いが切ない。
男女の行方とは…。
作品情報
制作年 2006年
制作国 アイルランド
上映時間 87分
ジャンル ドラマ、ロマンス
監督
ジョン・カーニー
キャスト
グレン・ハンサード(男)
マルケタ・イルグロヴァ(女)
ヒュー・ウォルシュ(ティミー・ドラマー)
ゲリー・ヘンドリック(リード・ギタリスト)
アラスター・フォーリー(べーシスト)
あらすじ
ダブリンのストリートで自作の歌を奏でる男。
彼の前にひとりの女が現れる。
彼女のピアノにほれ込んだ男は、彼女のために曲を書き、2人のセッションは美しいハーモニーを奏でる。
感想・考察
シング・ストリートのジョン・カーニー作品
僕が最近みた「シング・ストリート」はここ最近で一番のお気に入りの作品になった。それを監督しているのが、今作と同じジョン・カーニー監督で両方とも音楽がテーマに描かれている。しかし、落ちどころが全く違う。
シング・ストリートは少年たちの希望に満ち溢れた未来へ、今作は希望を見せられたにも関わらず日常へ舞い戻らされるよな作品。なので、総じて暗さのある作品になっている。
救いようのないほどにというわけでもないのだけれど、結局こうなってしまうのか。という意味では普遍的なのでリアリティを感じつ男女模様にもなっていたりする。
ダブリンが美化してくれる 音楽があればいい
僕は映画の中では台湾や韓国と行ったようなネオンのギラつくような街が好きだったりする。それとは今作の舞台であるダブリンは真逆だったりする。実際のダブリンは色鮮やかなのだけれど、今作においてはどちらかといえば陰湿なのだけれど、その中にシックな印象を受けたりもする。陰湿というのは映像自体が暗めで野暮ったいような感じだから。
それに加えて、主人公である男は路上で弾き語りをしながら父親の小さな店を手伝っていたり、女はシングルマザーで希望の見えない生活を生きている。それなのに、それほど暗がりにならず見れるのは、ダブリンという街のお陰でだろう。
そして、最も大きいのが音楽の存在だ。2人にとっての共通点は音楽。言い換えるとそれしかないのかもしれない。けれど、それだけあれば十分だとも思わせてくれる。音楽とはすごいもので、彼らが出会ったのもそうだし、他にも次々に仲間ができてくる。そして、路上で弾き語っていた彼の曲が最後にはレコーディングして形になるということで今作は終焉を迎える。
音楽だけでは満たされない
音楽があればいいと思えたのだけれど、どうやらそれだけではやはりダメだったりもする。男は彼女への好意から突拍子もないことを伝えてしまったり、彼女と住む決意をする。それにも関わらず、結局のとこと彼の末路は華やかなものではない、逆にいえば彼には音楽しかのここらないのだ。それが悲しいし、美化してくれるはずのダブリンさえもあざ笑うかのように色気がないのが救えない。
街や音楽に関して矛盾しているようだけれど、それらは一括りに表せない多面的な存在だ。男女のセッションしている時の音楽は楽しく幸福に満ちている。それなのに、エンディングはとてつもなく冷淡な音に聞こえてきてしまうから。