映画「プライベート・ライアン」監督・キャスト、あらすじ・感想 情報伝達メディアとして映画の語る戦争のリアル

ドキュメンタリーチックな徹底した戦争における、過酷なリアルの追求。

非情な戦争や愛国心のもたらす戦争への執念に見せられるライアンの葛藤。

それを、昇華させるのも、上層部の愛国心。

愛国心や経験値的に本来は、どうしても他人事になってしまう戦争。

それを情報伝達メディアとしてリアルに伝えてくれる映画の偉大さを感じることのできる作品。

作品情報

制作年 1998年

制作国 アメリカ

上映時間 170分

ジャンル ドラマ

監督

スティーヴン・スピルバーグ

キャスト

トム・ハンクス(ジョン・ミラー)

トム・サイズモア(マイケル・ホーヴァス)

エドワード・バーンズ(リチャード・ライベン)

バリー・ペッパー(ダニエル・ジャクソン)

アダム・ゴールドバーグ(スタンリー・メリッシュ)

あらすじ

第二次世界大戦が勃発した1944年が舞台。

アメリカとフランスによって構成された米英連合軍は、ドーバー海峡を渡り200万人程の兵がノルマンディー海岸に上陸する。

しかし、連合軍はドイツ軍の襲撃を受け多くの兵士が命を落とす。

そこで、命からがら生き延びたミラー大尉に下されたのは、戦死した3人の兄を持つジェームズ・ライアンを故郷の母元へ帰還させるという任務だった。

しかし、戦いは激しさを増し…。

感想・考察

歴史上最大規模のノルマンディー上陸作戦

別名「ネプチューン作戦」とも呼ばれる、歴史上最大規模の上陸作戦をもとに描かれた作品で小説やゲームには、この名で呼ばれることが多いです。
歴史の教科書などにも取り上げられていますが、近代史の中でも軍を抜く複雑な背景をもつ、第二次世界対戦における軍事作戦であります。
最終的に200万人ほどの兵士が上陸しましたが、上陸のためだけになんと4200人が死傷したとされています。
今作でも、それについてリアルに演出が成されており最も印象的なシーンの1つです。

溺死か銃殺か 変えようのない運命

上陸の恐怖心やプレッシャーで嘔吐する兵士や海に飛び込み逃げ出す兵士の描写は、過酷さを物語っています。
兵士の装備は10kg以上にも及ぶということなので、海へ逃げ出してもそれは地獄です。
10kgの装備が海水を含めば、数十kgですから、常人では泳げるわけもありません。
水上では銃弾、水中では重り。それぞれが物語るのは、過酷極まりない戦争と変えようのない重い運命を背負い、沈みゆく一般の兵士の姿。上陸後、銃弾による血しぶきや海岸に打ち上げられる兵士や銃、それを染め上げる血に染まった海は圧巻です。
これを見れば、苦しみながらも装備を抱えて溺死した方が賢明であるようにも思えてきます。
そんな比喩対象でありながらリアルな描写は目を背けたくなるほど臨場感があり、多く観客の目を掴んだことでしょう。
このグロテクスな表現が今作の重要なポイントにはなりますが、変にホラー映画を見るよりも恐怖を感じます。
苦手な方は注意してください。そのくらいの重い描写になっています。

恐怖や死を越えてまで、成し得たいこと。 愛国心の酷さ

ベトナム戦争をテーマに描かれた作品にも感じることですが、愛国心のもたらす戦争への参画は本当に酷いものです。
本来、愛を語らうならば、それはもう素晴らしいことになるわけですが、今作を筆頭に愛国心によって国のため戦うというのは、遺憾にも感じるわけであります。
愛国心もなく戦争を経験したこともない自分が語るのは恥ずかしい話ではありますが、何がそれを突き動かすのかには気になる点です。
また、国という普遍的でありながらも実態のない何かに突き動かされるのは、どうも感情移入できないような気もするのです。
言い換えれば、酷いと言っても、それは他人事でしか感じられないのも悲しいような気もするのです。
だからこそ。本来他人事であっても情報伝達のメディアとして、映画によって表面でも何かを感じることができることは素晴らしくて、だから映画は良いのです。
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