4DX上映が決定した普及の名作であり宮崎駿初監督作品「ルパン三世 カリオストロの城」
今作で登場するミートボールスパゲティにチーズにソーセージ。人々を惹きつけるジブリ飯の原点はここにあるのかもしれない。
そして、今作で登場した「あなたの心です」をはじめとする数々の名言は何度見ても聞いても気持ちがいい。
ルパンのルパンである所以というか、彼の格好よさを直に感じることができる作品。
作品情報
製作年 1979年
製作国 日本
上映時間 100分
ジャンル アニメ
監督
宮崎駿
キャスト
山田康夫(ルパン三世)
小林清志(次元大介)
増山江威子(峰不二子)
井上真樹夫(石川五右衛門)
納谷悟郎(銭形警部)
島本須美(クラリス)
石田太郎(カリオストロ伯爵)
あらすじ
国営カジノから盗み出した大金がゴート札と呼ばれる偽札であることに気づいたルパンと次元。
2人はゴート札の秘密を探るため、カリオストロ公国へ向かうが、その途中で謎の男たちに追われていた少女クラリスを助けるが…。
感想・考察
4DX上映決定 普及の名作であり宮崎駿初監督作品
「ルパン三世 カリオストロの城」といえばアニメ映画の中でも普及の名作呼ぶに相応しい作品。日本アニメを代表する宮崎駿監督の映画初監督作品としても知られている今作だが、本当にどこを取っても隙がない。ルパンをはじめ次元、五右衛門、不二子、銭形といったお馴染みのキャラクターに加え、クラリス、カリオストロ伯爵も今作だけでは勿体ないほどの味を出している。音楽や演出を取っても不足なしの出来だ。映画を見ていると人間の作ったアーティファクトなので、1つや2つ隙が出るのが当然に思えるが、僕に取っては何もかもが素晴らしい。
これは僕の主観であるに違いないのだけれど、4DXで再上映されると決まってからは、これが確信に変わったような気がしている。というのも、「ルパン三世 カリオストロの城」は1979年に公開された作品であり、もう40年を迎えるにも関わらずこのタイミングで再上映するということは、それだけ根強い人気を誇っているに違いないからだ。あまり同じ作品を繰り返し見ることのない僕が既に10回は見ている。これは僕が単に暇人だとかそういうことは置いておいたとしても、暇がなくても見たいと思える作品であるし、一度は見ておきたい作品だ。ルパンシリーズを見たことがなくても間違いなく楽しめるはず。
ミートボールスパゲティにチーズにソーセージ ジブリ飯の原点
宮崎駿作品はじめジブリ作品といえば、食欲を掻き立てる食事が印象的だ。もはや別名”ジブリ飯”なんても呼ばれている。「天空の城ラピュタ」に登場する洞窟で食べる”ラピュタパン”やパズーの家で食べるロブスター、飛行船で食べるカレー。「となりのトトロ」に登場するお弁当や水に冷やしただけのきゅうり。「千と千尋の神隠し」に登場する馬鹿でかいオニギリやお父さんの食べる得体の知れない肉のようなやつ。「崖の上のポニョ」に登場する”ハムとゆでたまご乗せ即席ラーメン”。「ハウルと動く城」に登場するベーコンと卵。「風立ちぬ」に登場するシベリアや鯖の味噌煮。ざっと挙げただけでも、これだたくさんのジブリ飯が存在している。
その原点ともなっているのが「ルパン三世 カリオストロの城」に登場する食事といっても過言ではないだろう。今作で登場する中でも特筆すべきはミートボールスパゲティだ。これをどちらが多く食べるかでルパンと次元が取り合いになるコミカルなシーンは、食事の見た目に加えて、その美味しさを効果的に表現している。他にもインスタントのきつねうどんや銭形警部が凄まじくおきな口を開けて頬張るカップラーメンがある。さらに、名言にもなっている療養中のルパンが「血が足りねぇ、なんでもいい。じゃんじゃん持ってこい!」といって用意させたソーセージやチーズ、パン、ワインを猛然と口に放り込むシーンも非常に見応えがある。
実際、これらの食事は高級品でもなければ希少な食べ物でもない。それでも、これらが”ジブリ飯”と呼ばれ多くの観客の心を掴むのは、その瞬間瞬間の演出が見事だからだろう。ミートボールスパゲッティは取り合うことでその価値を高めているし、きつねうどんは寒さで一層美味しさを増す。銭形警部のカップラーメンは彼が大急ぎで食べ次の現場へ向かうことで、数分で食べることのできるインスタント的な要素を象徴している。療養中のルパンはチーズやソーセージの巨大さ、食べ終わった後の大きく膨れ上がったお腹が食べ応えを表現している。
ここで宮崎駿監督をはじめとする製作陣が伝えようとしていることを考えてみる。すると、どれも何気ない日常で目にすることのできる普遍的な食事なのだ。ということは、日常の中にでも食事を楽しむヒントはたくさん詰まっているとうことにもなるだろう。値段が高い高級品、数の少ない希少な食品、それらを使った料理も確かに美味しい食事には違いない。けれど、普遍的なものであっても素晴らしいと示唆させてくれる。カップラーメンなんて最も安い食事の中の1つであるに違いない訳であるし。インスタントラーメンの生みの親で日清食品を創業した安藤百福氏によれば、インスタントラーメンの大きな目的に経済的困窮を脱するためだという。そんな背景をアニメーションで伝えてくれるからジブリ飯は単に美味しいというイメージだけではなく普遍的なメッセージまで残している。だからこそ「ルパン三世 カリオストロの城」は名作であると言えるのではないか。
カリオストロの城で登場した「あなたの心です」をはじめとする数々の名言
今作は特に名言の豊富な作品としても知られている。クライマックスでクラリスに対して銭形警部の「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。」はあまりにも有名。そして、クラリスは「はい。」と微笑みながら答える。このシーンは何度見ても清々しい気持ちになる。実際、心を奪われているのはクラリスもそうだけれど銭形も同じで、彼も毎度ルパン逮捕に躍起になっている。
そして、特筆すべきはその名言の生まれる前のルパンとクラリスが別れるシーン。泥棒を覚えてルパンに付いていきたいと願うクラリスにルパンは、あえて抱きしめることなく、泥棒の世界に引き込むことなく「俺のように薄汚れちゃいけないんだよ。」と言い残し去る。この自分を下げて他を立てる姿勢が格好良くどこか日本人的な控えめな対応が日本人を掴む気もする。そして、序盤ではルパンや次元を厄介者扱いしていたおじいさんも「なんと気持ちのいい連中だろう」というセルフも気持ちが良い。ルパンの格好良さはこういうとこなのだろう。泥棒である以前に優れた人格を持っているということは間違いないし、それが人を引く源泉なんだろう。