映画「アメリカン・ビューティー」監督・キャスト、あらすじ・感想 白人優位社会へのアイロニー

見かけの美しさや白は高貴という白人優位社会を揶揄する。

タイトルはアメリカの美。

薔薇やルックスの美しさは確かにあるのだけれど、今作のメッセージはそうではなく、アメリカ社会へのアイロニカルな作風。

作品情報

制作年 1999年

制作国 アメリカ

上映時間 117分

ジャンル ドラマ

監督

サム・メンデス

キャスト

ケヴィン・スペイシー(レスター・バーナム)

アネット・ベニング(キャロリン・バーナム)

ソーラ・バーチ(ジェーン・バーナム)

ウェス・ベントリー(リッキー・フィッツ)

あらすじ

郊外の新興住宅地に暮らす40歳を過ぎた広告マンのレスター・バーナムと上昇志向たっぷりの妻キャロリンと娘ジェーンは三人暮らし。

夫婦仲は冷め、妻は夫を憎み、娘のジェーンは父親を軽蔑し話すこともない。

そして会社の上司はレスターにリストラによる解雇を告げ、そんな毎日に嫌気が差したレスターは、人生の方向転換を図る。

キャロリンは娘の友人に性的妄想を抱き浮気、娘は隣家の青年と駆け落ちを決意。

自由と幸せを求めるレスターを待ち受けていたのは、あまりにも高価な代償だった。

感想・考察

タイトルはアメリカン・ビューティだけれど

アメリカン・ビューティー、直訳すればアメリカの美しさということになるのだけれど、描かれているのは、そんな美しいものではないのかもしれない。

レスターをはじめとして、登場人物の妬みや葛藤、欲望など、そういうところがメインだ。

というのも、内容は家庭が崩れ去る様を、映した作品になっているから。

言い換えると、それが人間らしさであり、監督的にはそれが美しさでもある可能性も。

タイトルは妬み、葛藤、欲望の美という人間的な美のメタファー的なものを指しているのかもしれない。

 

一方で、普遍的に美しいとされる美しきものも、ところどころ挿入されているもの確か。

皆が美しいというのかはわからないけれど、レスターが虜になってしまうキャロリンの友人は正にそう。

さらに彼が妄想の中で描く薔薇の花や、部屋に飾られている薔薇もまたそう。

 

彼ら家族もはたから見れば一見ビューティーかもしれないし、庭付きの一軒家を構え、妻はバリバリの仕事人、見た目は貧しさを感じることはない。

しかし、中を見てみれば夫婦仲は冷め娘は反抗期、妻は浮気、レスターはリストラにドラッグ。

そうすると、タイトルのような美を感じることはなく、見かけの美を揶揄している作品にも見えてくる。

白人優位な社会を揶揄した作品

ブラインド・スポッティング」をはじめとして、白人優位な社会を揶揄していたり、人種差別に訴えかけている作品は沢山ある。

実写版「シンデレラ」にもそんなメッセージを感じた。

 

今作で描かれているのは、実は全て白人のアメリカ人で彼らへの皮肉を込めた、アイロニカルな作品に感じてくる。

その象徴として作中では先ほど挙げたような、犯行や浮気、リストラ、ドラッグというものが描かれている、そして極め付けはビニール袋だった。

ビニール袋が風の乗って舞うシーンがあるのだけれど、それを見て「美しい」というのだ。

もちろん、ビニール袋の色は白で、白人を比喩しているのだろう。

 

白人=高貴のようなスキームは全く当てはまらないと、今作では示唆させる。

そして、中でも誇り高き軍人であるはずの隣人が実は…。という結末は迎えている。

 

Bitly