先日公開された実写版「ライオン・キング」。これは日本のアニメの模倣であるという疑惑が…。
しかしながら、だからこそ、日本のアニメや漫画の価値を再確認するきっかけにもなりました。
そして、ムファサの王の哲学がしみる。
作品情報
制作年 1994年
制作国 アメリカ
上映時間 87分
ジャンル アニメ
監督
ロジャー・アラーズ
ロブ・ミンコフ
キャスト
ジョナサン・テイラー・トーマス(シンバ:young)
マシュー・ブロデリック(シンバ:Adult)
ジェームズ・アール・ジョーンズ(ムファサ)
ローワン・アトキンソン(ザズー)
ジェレミー・アイアンズ(スカー)
あらすじ
動物の王国プライドランドに君臨する偉大なジャングルの王ムファサの息子として生を受けたシンバ。
父は、いつの日か王座につく者の心構え “サークル・オブ・ライフ”について説く。
それは自然界は生と死を繰り返し、魂は失われることはない、ということだった。
しかし、王位を狙う邪悪な叔父スカーの罠にかかり、父ムファサは命を落とし、シンバは王国を追放されてしまう。
月日は流れ、暴君スカーによって変わり果てた王国の惨状を知ったシンバは、自分の中に生きる父の魂に気づき、スカーと戦うべく立ち上がる。
感想・考察
ジャングル大帝の盗作疑惑について
僕の好きな漫画、映画の1つが「ジャングル大帝」。
これは、漫画の神様とも言われている手塚治虫さんの作品で、小学生の時に再放送かレンタル幾度か鑑賞してきた。
そしてその「ジャングル大帝」を模倣して製作されたとして盗作疑惑のある作品として米メディアが報道しているのが今作。
1994年の公開当時にも議論されていたようだが、「ライオン・キング」の実写版が公開され再び議論の対象になっているとのこと。
これは、「ジャングル大帝」に思い入れのある自分としては非常に悲しいこと。
模倣される日本アニメ
しかしながら、そんな報道によって改めて「ジャングル大帝」をはじめとして日本漫画の素晴らしさを感じることのできる機会にもなった。
というのも、そもそも盗作に値するということは、それだけ価値のある作品であるということの裏付けでもあるし、ましてや相手は世界のディズニー。
中国の”インチキ”キャラクターやグッズだってそう。
さらに世界的に高い評価を得ている「ライオン・キング」だが、むしろ比較対象となれば「ジャングル大帝」が際立つ。
それほど日本の漫画やアニメーションは僕の心はもちろん、今や世界中の人々の心を掴んでいるし、それは海外の反応を見えばそれは明らか。
それもあってディズニーは最近、エンタメ性もさることながら、複雑な心理描写を写していると思う。
例えば、先日日本でも公開された映画「トイ・ストーリー4」、大ヒットを記録した映画「アナと雪の女王」、バックグラウンド設定が深妙な映画「ズートピア」なんかはその際たる作品である。
繊細で哲学的で、それは視覚的のみにとどまらないし、言語化するのに難しさを覚えるほどに情緒的。そして年齢も問わない。子供はもちろん大人だって学ぶことがたくさん散りばめられてる。
ジブリ作品は、その際たる例だけれど、それが持つ教養性や社会性。そして暖かいのだけれど、何処か乱暴にも見えるから不思議。
ムファサが王だけれども
今作の気になる点というのはいくつかあって、まずはムファサが王だけれど、それは知性や捕食の面で劣っているという点。
スカーの「知恵比べなら、いつでも受けて立つ」という言葉からわかるように、ムファサはリーダーとしての素質はあるのかもしれないけれど、どこか威圧的だし、スカーに知性で劣る。
さらに、ハイエナが飢えている設定だけれど、本来ならライオンよりもハイエナの方が捕食能力が高いはず。それなのにスカーから放り投げられた肉を食べるシーンがどうも腑に落ちない。
すると、どうも古典的というか単調な設定にもみえてしまう。
こういう点も日本漫画のような繊細さや製作のこだわりが欠けているように感じる。
一方でムファサからのシンバへの教えは知性を感じるし、王であるものボスではなくリーダーであれ、という心意気を感じるので好印象。
「命あるものは、全てが関わりを持って釣り合いを持っている。」
「小さくても大きくも敬意を払う。」
ムファサには少し腑に落ちない点もあったけれど、シンバへの言葉を的確で”王”を感じた。
それからわかったこと言えば、王やリーダーは哲学者であれということなのかもしれない。