この作品は単なるミステリーやSF映画としてみるだけでは勿体無いではないのでしょう。
学びが深い。
中央集権の仕組みの限界を示唆させ、小さなコミュニティの重要性を解く。
作品情報
制作年 2014年
制作国 イギリス
上映時間 113分
ジャンル ミステリー
監督
ウェス・ボール
キャスト
ディラン・オブライエン(トーマス)
カヤ・スコデラーリオ(テレサ)
アムル・アミーン(アルビー)
トーマス・ブロディ=サングスター(ニュート)
あらすじ
朝になると迷路の扉が開き夜に近づくと閉まる巨大迷路に閉じ込められた人々。
月に一度送り込まれてくる記憶を失った人。
彼らは脱出するためにコミュニティを形成し生活していた。
そこへ今作の主人公が投入される物語。
感想・考察
高度なメッセージを含む作風
映画に対する賛否はもちろんあり、映画をどう捉えるのかについては個人の見解ですが、それにしてもこの作品は過小評価され過ぎている気がしてなりません。
極端に低評価ではありませんが、これはもっと評価されるべき作品であると思います。
現代に訴えかけているテーマ選定が本当に素晴らしいです
中央集権の限界を示唆させている
この映画の中の世界では、アルビーまたはギャザーによる中央主権的に課せられた3つのルールの元に人々が暮らしていますが、これは現代社会への比喩でしょう。
国家や会社に依存的な社会、現代はこのような中央主権的なコミュニティが形成され、そこに基づいたルール(法律・秩序・モラル)の上で生活しています。
それとこの世界は類似しています。
そのような世界に対してネガティブな意見が多くあります。資本主義の飽和や限界点だったり、貨幣経済の必要性というのは議論されているところではあって、それを脱却する可能性のあるコミュニティ形成やまちづくり的なものが、テーマにある今作というのは一種の学問的な価値があるとも感じたので、もっと評価されるべきだと思ったのです。
現代に置き換えると、このような社会を破壊する可能性を最も秘めているのが仮想通貨でしょう。
それによって貨幣経済、国家というのは今までよりも必要性がなくなり、今ほどの中央集権的なコミュニティの必要なくなると思っています。
既存のスキームを替えるのは可笑しな人
今作では、家も食べ物も自分で作り基本的に自給自足の生活です。そしてそこでのトップ(ギャザー)というのは既存のスキームを変える存在(トーマス)というのは嫌悪します。
我々の社会でも同様で、会社員だったら規則に応じない人間は煙たがれるでしょう。
しかし、それがポジティブに作用するかネガティブに作用するかはわかりませんが、変えてくれる人は一般論では可笑しな人、変わっている人なんですよね。
劇中で嫌悪されつつも慕われれ仲間の参道を集める存在になるトーマスの姿はまさに、その良い例でしょう。
チェンジという病気のようなものにしてもコミュニティを継続するには感染しないようにするため排除(抹殺)しないといけなくて病原菌に立ち向かった人間の進化劇を見ているようでもありました。
まさに、その類や歴史を学ぶことも大切なことなんだなあと思ったり。
そんなことも伝えてくれた映画に感じました。
監督の意図は如何なるものか
実際に監督がどのような意図で今作を製作したのかについて調べましたが、監督自体の情報がほとんど出てきませんでした。
なので詳細はわかりませんが、娯楽的思想の元だけに製作されたのではなく、意図的に現代のライフスタイルに訴えかけることが目的であったら本当価値のある作品であると思います。
タイトルに沿った作品ではないかもしれません。
それで期待する内容と違って評価が低いかな。
あとはグリーバーのグラフィックが暗すぎてよくわからなかったので、もう少し見やすかったらよかったかなあ。
でも総じて興味深い作品でした。次回作への誘致もうまいなと思います。
これを見たら2も見たくなるでしょう。少なくとも自分は見たくなりました。