画を楽しみ感じて楽しむ。それがヌーヴェルヴァーグをはじめとするムーブメントかな。
既存の映画業界への、固定観念を払拭しようとする、自由の叫びこそがヌーヴェルヴァーグのメッセージかと。
作品情報
製作年 1960年
製作国 フランス
上映時間 90分
ジャンル ドラマ
監督
ジャン=リュック・ゴダール
キャスト
ジャン=ポール・ベルモンド(ミシェル・ポワカール)
ジーン・セバーグ(パトリシア・フランキーニ)
ダニエル・ブーランジェ(ヴィダル刑事)
ジャン=ピエール・メルビル(作家パルヴュレスコ)
アンリ=ジャック・ユエ(アントニオ・ベルッチ)
ジャン=リュック・ゴダール(密告者)
あらすじ
警官を殺してパリに逃げてきた自動車泥棒のミシェル。
彼は新聞売りのアメリカ留学生パトリシアとの自由な関係を楽しんでいた。
パトリシアはミシェルの愛を確かめるために、彼の居場所を警察に伝え、そのことをミシェルにも教えるが…。
感想・考察
画を楽しむ
映画の何をみて楽しい・面白いと思うのかは、人によりけり。映像、物語、音楽、キャスト上げればきりがないけれど、ヌーヴェルヴァーグの代表格として知られている今作は、いかにもヌーヴェルヴァーグらしい。そもそもヌーヴェルヴァーグを一言二言で定義づけるのはこんなんだろうと思う。一言で言えば映画革命にあたるのだけれど、その革命は映画を通したムーブメントであり、ムーブメントというからには社会と密接である。すると、それを定付けて、あれやこれやと書くのも難しい。
実際、今作と並んでヌーヴェルヴァーグの代表作「気狂いピエロ」を見たけれど難解だった。それでも、今作を含めたヌーヴェルヴァーグはもとより、その他のアメリカンニューシネマや台湾ニューシネマというムーブメントの価値はわかる。わかると言っても、それを書くことが難しいのだから面白い。そこで思うのは単に”画が面白い”ということ。他のムーブメントは、そのバックグラウンドに面白さを感じるけれど、ヌーヴェルヴァーグにおいて特筆すべきは画だ。
今作では、予期せすクローズアップや隠し撮り、ジャンプカットなど様々な映画用語で表現されているように、面白い撮影技法が満載。しかし、それらを知らなくても面白いのが、今作の凄さなのだと思う。あくまで娯楽であるという位置付けであれば、それはマスに向けたものになるから、知らなくても面白いと思えるのが映画的にも、アートとしての価値を高めているのだと思える。
感じて楽しむ
ヌーヴェルヴァーグがロケ中心や低予算という方法で、既存の映画界をアイロニカルな意味合いがを込めて自由を表現したものであるならば、その技法についてあれやこれやと語ることも思うことも、全ては自由。実際、これらのムーブメントや技法を知っていてこそ映画通という風潮もわからなくもないけれど、そういう固定観念を払拭しようとする、自由の叫びこそがヌーヴェルヴァーグのメッセージであるとも思える。
確かに画的に面白いし文化的な側面を見ても意義のある作品群であるのだけれど、あえて率直に言うと、映画的に面白いのかといえば悩ましいものがある。だから、おすすめされても好きな作品を聞かれても、僕は他の作品を挙げる。「ドラゴンタトゥーの女」「マミー」「GO」あたりの方が随分と面白く感じる。是非論ではないけれど、文化や他の意見に固定観念を持っていると自分の思いが掻き消されてしまうから。