映画「軍中楽園」監督・キャスト、あらすじ・感想 慰安問題、本質的な優しさ。遣る瀬無さと自由な蛍

よーやく、観ました。ジャケット見て惹きこまれ、これは絶対見ようと。
しかし、難解な作品でもありました。

作品情報

制作年 2014年

制作国 台湾

上映時間 133分

ジャンル ドラマ、ロマンス

監督

ニウ・チェンザー

キャスト

イーサン・ルアン(タオバイ)

レジーナ・ワン(ニーニー)

チェン・ジェイビン(ラオジャン)

アイビー・チェン(アジャオ)

あらすじ

戦後の台湾に公然の秘密として実在した娼館が舞台。
1969年、確執の続く中国と台湾は金門島を最前線として激戦が繰り広げられていた。
台湾の青年ルイバオタイはエリート駐屯兵として配属されたが、泳げないことを理由に娼館「軍中楽園」に転属させられる。
そこで慰安婦ニーニーと出会い、友情を育むがやがて救いの無い運命に翻弄されていく。

感想・考察

台湾の巨匠ホウ・シャオシェン協賛

先日鑑賞した「モンガに散る」のニウ・チェンザー監督の作品です。
彼らしさを垣間見ることのできる作品ですが、思ったよりも前作の方が好みかもしれない。
台湾の映画界では特に著名なホウ・シャオシェン監督が今作の編集に協力していたそう。
また彼の作品にニウ監督は当時子役として出演していたそうな。

慰安問題について

問題と定義して良いのか定かではありませんが、所謂慰安問題といった様な、国やら軍の圧に押される民間の人々のやり場の無い想いやそこに芽生えてしまう恋愛模様など非常に好きな、興味深いテーマではありました。
この様なシリアスな社会性に富んだテーマを表現することの難しさ。
というのもまた目には見て取れないしがらみに囚われている自分なのでしょうか。
それを表現者として映し出す制作側に感謝すると共に一種の誇示とも思わせたりもするのでした。
綺麗なメロディなのに台湾の昔の風景が何処か儚さを醸し出します。

ニーニーの優しさ

失恋したタオに先ずは何も言わず酒を渡す。
そして「約束は自分とするの。誰でもない。守るかどうか、決めるのは自分よ」素敵な言葉だけれども重い。
権力には抗えず先の見えない自分の運命を悟っているニーニーが彼に伝えたこの言葉の重みたるや。
此れを聞いた彼もニーニーもそこに確かにある其々の機微というのは何様にも言い表せません。
多くは語らず次のシーンへと移り変わるのも巧い。
伝えたい事があるけれど敢えて伝えず、長い物に撒かれ自分の意思では抵抗できない彼の葛藤を表している様に感じます。

男尊女卑に加え娼婦というバックグラウンド

どんなに低い地位の男よりも女は地位が低い、娼婦なら尚更。卑しい。
此れが当時の仕組みで、認知していましたが今見るとやはり衝撃ではあります。

自由な蛍との対比

軽快な音楽と共に自由に宙を舞う蛍が2人の現場からは抜け出せない状態と対比して描かれて染みます。
2人の自由を一時でも表現している。
そんな光り輝いて舞う蛍が儚い。

敢えて見せないことで

シーンの切り替わりもそうなんですが、敢えて演出を見せないというか、すぐに次のシーンに移る事で逆に魅せてる。
視聴者に考えさせてるのだと思います。
巧くそうやって惹きつける演出というか手法なのか。そいう面であまり類を見ない撮り方なのでしょうか。
ジャケット的に、暗めの演出の中に鮮やかな色彩を入れるのかと思っていたら予想以上に全体を通して色は明るめでした。
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