YAMAKASIとはパルクールやアクロバット技術の実践者達により構成されるフランスの集団のことで、端的に言えばパフォーマー。
そんな彼らが少年を救うために奮闘する物語。
脚本は「レオン」で有名なリュック・ベッソンが務めている。
しかし、これは難ありの作品。
というのも、窃盗が美化されているから。
作品情報
制作年 2001年
制作国 フランス
上映時間 91分
ジャンル アクション
監督
アリエル・ゼトゥン
キャスト
YAMAKASI
マエル・カモウン
ブリュノ・フランデル
アフィダ・ターリ
あらすじ
フリカのコンゴの言語で“超人”を意味する「YAMAKASI」は、華麗なスタント・トリックでパリの街を縦横無尽に飛び回る7人組のパフォーマンス集団。
ヒップホップに乗ったリズミカルな動きで高層ビルを昇り降りする彼らは、97年にマスコミに登場して以来、パリの若者を熱狂させてきた。
そんな彼らは、ひとりの少年を死から救うために立ち上がった。
「YAMAKASI」は、彼らの肉体の極限に挑み、法さえも踏み越えた危険な賭け、そして少年の命は…。
感想・考察
YAMAKASIとは
まず、今作の主人公はというと、”YAMAKASI”。
これは、パルクール(フランスの軍事訓練から発展して生まれた、走る・跳ぶ・登るといった移動所作に重点を置く、スポーツもしくは動作鍛錬)やアクロバット技術の実践者達により構成されるフランスの集団のことのよう。
端的に言えば、パフォーマーであり、彼らにフォーカスしていくという試みでの撮影のようで珍しい作品。
一見すると、彼らは単純に”楽しいから””面白いから”そのくらいの感覚でYAMAKASIとして活動しているよう。
そして、そんな彼らが”少年を救う”という目的を持たせることで物語と化している。
パフォーマーと言えばとエンターテイメントだろう。
だから、少年を救うとなると心理的な作用によって元気付けるという感じだとイメージしていた。
しかし、彼らの行なっていたのは、”窃盗”だった。
しかも、それが如何にも美しいもののように描かれているように感じる。
また同じような感想を持ってしまうが、これは「アラジン」と同じではないか。
「アラジン」でも主人公アラジンは盗人であるにも関わらず、美化されているようでならない。
これだけ、法やモラルも可視化されている現代で、それを具体化して映画にする必要はあるのだろうか。
もちろん、少年を救うための方法としてお金が必要なことは理解できるが、その方法として窃盗というのはいかがかと思う。
パフォーマーであるならば何か他の方法があるはず、安直だけれどパフォーマンスで募金的なことを行うでもなんでも。
それでも上手くいかずに苦肉の策であるならば、仕方ないかもしれない。
それを鬱憤や葛藤としてなら。
なのに唯一の方法が窃盗…。
これなら、彼らのドキュメンタリーでも撮ったほうがよっぽど映画的に良作になるはず。
制作側が何を伝えたいのか、そのメッセージが何も見えなかった。
リュック・ベッソン監督が脚本を担当
今作は、「レオン」「ダニー・ザ・ドッグ」「LUCY/ルーシー」と僕の好きな作品をたくさん撮っている、リュックベッソン監督が脚本を務めている。
なので、非常に期待値の高い状態で見始まった。
しかし、彼の良さが全然見当たらない。
映画的には、先ほど言ったように全くメッセージを感じなかったわけだけれど、何かあったはずだと考えてもどうしても見当たらない。
僕はリュックベッソンと言えば、挑戦的な監督だと思っている。
「レオン」は周知の通り高い評価を得ている映画だけれども、それとは全く異なる作風の作品も撮っている。
例えば「レオン」よりも前だが、「フィフス・エレメント」なんかはSFであり制作費100億円が注ぎ込まれた作品だし、そんな彼の挑戦的な作風が僕は好きだ。
そう思えば、「YAMAKASI」が僕に与えたネガというのも一種の挑戦的な姿勢から来ているのかもしれない。
だが、それにしても残念ではある。