映画「夢売るふたり」監督・キャスト、あらすじ・感想 これぞカタルシス。巧みな脚本に演出、西川ワールド

映画「夢売るふたり」監督・キャスト、あらすじ・感想 これぞカタルシス。巧みな脚本に演出、西川ワールド

此れは久々に邦画で”凄い””巧い”作品を見ました。

ラストの演出は、これぞカタルシス。という感じでです。

邦画の中ではかなりお気に入りの作品になりました。

作品情報

制作年 2012年

制作国 日本

上映時間 137分

ジャンル ドラマ

監督

西川美和

キャスト

松たか子(市澤里子)

阿部サダヲ(市澤貫也)

田中麗奈(棚橋咲月)

鈴木砂羽(陸島玲子)

あらすじ

東京で料理屋を営む夫婦。

2人の店は失火が原因で全焼してしまう。

ポジティブに再起を願う妻とネガティブに酒に溺れる夫だが、2人はある事をきっかけに再起をかけて結婚詐欺を考案する。

感想・考察

始まって欲しくない。けれども好奇心を刺激されるオープニング

オープニングのなんとも言えない機微を感じさせる音楽と演出が、これからの展開に関心を抱かせるとともに何処か物語が始まって欲しくないように思わせる不思議な錯覚を与えてくれました。

関係者の多様性と、その効果

あらすじを読んで2人の間で結婚詐欺を起こすのかと思っていましたが、もっとスケールして行き沢山の人間が関わっており、それらの人間模様でした。

どうしても2時間前後に集約されている作品なので関わる人が多いほどに一人一人のカットは少なくなりストーリー性も薄くなってしまうと思っていたのですが、この作品は全くそんなこともなく寧ろ其々の時間が絶妙の塩梅であるように感じます。

西川美和ワールド

監督を務めて西川美和さんは原案、脚本も担当したということで凄いマルチな魅力を感じました。

有名どころでクリストファー・ノーランやスティーブン・スピルバーグ、ティム・バートンなんかの作品も、映画からその人のワールドを感じるのですが、この作品には「西川美和ワールド」を感じました。

松たか子の豹変

こんな献身的な奥さんがいれば幸せだろうなあ素敵だなあ。

それに加えて九州弁。良すぎる。などと安直に観ていた冒頭。

それも、つかの間でした。

豹変した松たか子演じる里子の冷酷な態度はキレがあって非常に怖い。

しかもそれに留まらず、夫を利用して周りの女性を陥れていく様は圧巻でした。

脚本素晴らしい。

これが松たか子の巧さで西川美和の映画なのか。他のも観なくては。

普遍的なキャスティングの効果

沢山作品を観てるわけでもないので、本質的には理解出来ていないと思いますが、個人的に松たか子も阿部サダヲもそこら辺にいそうなビジュアルだと思っていました。

しかしながら、だからこそ、この有り触れた中に垣間見れるからこその怖さは表現できて効果的なんだなとも感じさせてくれます。

所謂こういう普通っぽい人々で異常を作るのが面白いのでしょう。

実際自分はかなり面白い作品だと感じました。

キャスティングもハマっていたしストーリーも一見普通っぽいけど、そこに見え隠れする欲深さやサイコパス気質のものを異常な程に、ストーリーと関連付けていくことで、普通っぽくて異常な人だからこそ、人を惹きつける作品になるのだろうな。

コミカルな演出の和み

無音で笑いを誘うシーンが1つあって良いアクセントになっていました。

巧く緩ませてくれたシーンでした。

ウェイトの効果音なんかの音の操り方が上手かった。

芸能界の荒波

鶴瓶師匠の、あの柔らかい顔からの迫力あるパンチ凄すぎて年の功といいますか、これが芸能の世界に長く身を置いてる人の迫力なのでしょう。

テレビで観ると穏やかで優しいイメージなので余計ですが、こんなに良い演技をするのかと、少ない出番にも関わらず流石の存在感でした。

人間が織り成す陰陽

人間の陰陽をシリアスに効果的に表現された世界から浄化してくれて良かった。

ズルズルとそのまま終わるのではないかと心配しましたが、再生に向けて歩き出す各々を映したラストは溜まりに溜まった鬱憤を昇華させるのに非常に効果的な演出でした。

本当カタルシスを感じる展開で、非常に巧くて良い映画でした。

 

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