美術以外何もわからない。
ゴダールを見てこそ映画通と言うのなら、どうやら僕はそうではないらしい。
確かに美術や哲学的・詩的なフレーズは残るけれども、正直なところ面白くはない。
言い換えれば、挑戦的な作品だ。
ヌーヴェルヴァーグというの台風の目になり、今尚挑戦し続けるという姿勢にこそ、今作を見る価値がある。
作品情報
制作年 2014年
制作国 フランス
上映時間 69分
ジャンル ドラマ
監督
ジャン=リュック・ゴダール
キャスト
エロイーズ・ゴデ
カメル・アブデリ
リシャール・シュバリエ
ゾエ・ブリュノー
ジェシカ・エリクソン
クリスチャン・グレゴーリ
あらすじ
ある人妻と独身の男が出会い恋に落ちる。
やがて2人の間には諍いが起こる。
季節はめぐり、2人は再会するが…。
感想・考察
美術以外何もわからない
ジャン=リュック・ゴダール監督というとヌーヴェルヴァーグの中心的な人物であって、ムーブメントの立役者的存在だろう。
そういったムーブメントとして彼の作品を見れば楽しい、今作であれば芸術、つまり単にアートとすれば楽しい。かもしれない。
「気狂いピエロ」は楽しかった。
ゴダール作品をわかってこそ、映画好きだ。というような風潮もどこかにあるだろうし、そんな風に感じたこともあったりはする。
けれど、あえて素直に言えば美術以外この映画からは何もわからない。
端的に言えば、面白くはない。
特段、今作や彼を否定する気はさらさらないのだけれど、映画として総じて面白みを感じない。
感じにくい作品であることは間違いない。
映画や芸術を生業にしている方であれば、見るのもいいのかもしれないけれど、娯楽として映画鑑賞を選ぶのであれば、見るに値しないだろう。
映画としては69分という短めではあるけれど、少なくとも1時間はこの作品のために費やすわけだ。
すると、娯楽映画としてみると、その1時間がとてつもなく長く感じるかもしれない。
遠い音や耳を裂くような音の乱立や揺れるカメラ、斜めに対象を捉えるカメラ、アスペクト比、ストップモーション。
全てがわからないけれど、よく言えばこれがアートというのだろう。
哲学的・詩的なフレーズを乗せて
美術は確かに素晴らしい。
それに加えてあげるとすれば哲学的・詩的なフレーズの数々だろう。
ドストエフスキーの挿入やダーウィンの物語りは、抽象的な映像を程よく締めてくれる。
まず、冒頭の「想像力をかく すべての人は 現実へと逃避する」「考えないということが
思考に悪影響を及ぼすか どうかは分からない」これはぐさりときたのは確かだ。
この言葉で僕は日本アニメを想起した。
僕もどちらかと言えばリアリズム的な人間かもしれないけれど、映画という想像の世界に魅せられている。
そしてアニメ好きの人はさらにアニメという想像の世界にのめり込んでいるのだろう。
アニメ好きは”きもい”なんて時代遅れだ。
というのも、アニメはサブカルチャーといわれているけれど、もはやメインカルチャーであり、産業においても人々の心理的な面でも大きなパワーを持っているから。
「人は国家を頼りすぎる。国家のせいにする。」と言うフレーズも重たい。
抽象的な映像とは裏腹に、核心をつく物言いだ。
きわめつけはダーウィンの「犬は自らよりも人間を愛する唯一の動物」というフレーズだった。
僕は愛犬を数ヶ月前に亡くしているので。